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Monday, March 1, 2021

アーセナルが「ズタズタにした左サイド」。なぜレスターに逆転勝利できたのか? アルテタ監督のえげつない作戦【分析コラム】 - フットボールチャンネル

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レスターに逆転勝利を収めたアーセナル

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【写真:Getty Images】

 アルテタ監督の“えげつなさ”が勝利をもたらした。現地時間2月28日に行われたプレミアリーグ第26節。敵地でレスター・シティと対戦したアーセナルは、7分と早い時間帯に不用意な守備から先制を許しながら、1-3で逆転勝利を収めた。

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 この会心の勝利を、ミケル・アルテタ監督は次のように振り返っている。

「選手たちは本当にソリッドで、落ち着いていて、自信を持っているようだったね。私たちは自分たちがしなければならないことをして、勝利に値したと思う」

 このアルテタ監督が言う「自分たちがしなければならないこと」とは何だろうか。もちろん「ソリッド」な守備を徹底することや、テンポ良く「落ち着いて」パスを回すことなど、それは何か1つのアクションに限定されるものではないだろう。それでも、この試合で特徴的だったことを1つ挙げるとすれば、ニコラ・ペペを右サイドに配置したことだ。

 潮目が変わった昨年12月のチェルシー戦以降、基本的にウインガーのペペは左右どちらでも起用されてきたが、今回のレスター戦では、前節のマンチェスター・シティ戦に続いて右で起用されている。

 このコートジボワール代表ウインガーを右サイドで起用した理由の1つは、まず出ずっぱりだったブカヨ・サカを休ませるためだろう。アーセナルは3日前の25日にUEFAヨーロッパリーグ(EL)ベンフィカ戦をこなしており、ローテーションの必要があった。ペペはそのベンフィカ戦では出場しておらず、コンディションは良好だったようだ。

アルテタ監督の情け容赦ない作戦

 そして何よりの理由は、対面するレスターの左SBルーク・トーマスに当てるためだったのではないか。負傷離脱したSBジェームズ・ジャスティンに代わって、2月13日のリバプール戦では左SBのポジションにリカルド・ペレイラが入ったが、前節のアストン・ヴィラ戦からはトーマスが左SBを務めてきた。

 しかし、このU-20イングランド代表DFはまだ19歳と若く、プレミアリーグそのものの出場経験も今回のアーセナル戦でようやく9試合目。レスターは25日にELのスラヴィア・プラハ戦をこなしており、トーマスはフル出場している。敗戦の精神的なダメージに加え、疲労の蓄積もあっただろう。

 つまり、アルテタ監督が言ったレスター戦で「自分たちがしなければならないこと」とは、そうした実戦経験に乏しく疲労困憊のトーマスがいる右サイドを重点的に攻めること、だったのではないか。より具体的には、経験豊富なペペのスピードとフィジカルで、対面する未熟なSBを蹂躙するという、なかなかの“えげつなさ”を秘めた戦略である。

 このアルテタ監督の情け容赦ない作戦は、レスター相手にとにかく功を奏した。そもそもトーマスだけでなく、レスターそのものがプラハ戦のダメージを引きずっているようだった。怪我人が相次いでいることもあってか、[4-4-2]の守備ブロックの強度は弱く、10番のジェームズ・マディソンを欠いたことで、カウンターの質も落ちていた。

羽が生えた猛獣と化した背番号19

 アーセナルは7分に失点したものの、前線から積極的にプレスを掛け、テンポ良くボールを動かし、レスターを揺さぶり続けた。そして右のペペを重点的に使う。

 ベンフィカ戦を休んだことですこぶる体調が良かったのか、コートジボワール人FWは、完璧な水質を得た魚のようだった。1対1の仕掛けだけでなく、FWアレクサンドル・ラカゼットとのコンビネーションで裏を突くなど、トーマスを圧倒。39分には、ペペが右サイドで仕掛けてトーマスのイエローカードを誘発し、FKを獲得した。このFKのチャンスをダヴィド・ルイスがヘディングで決めてアーセナルが同点に追い付く。

 さらに前半終了間際の47分、同サイドでペペがカットインから放ったシュートがウィルフレッド・ディディの手に当たり、PKを獲得。このチャンスはラカゼットが決めて、アーセナルが逆転に成功する。

 こうしてペペによってズタズタにされたトーマスは、前半だけで退くことになった。後半は左SBにリカルド・ペレイラが入ったが、羽が生えた猛獣と化したコートジボワール人を止めることはできなかった。53分、速攻からペペが仕掛け、ボックスの手前で左にマルティン・ウーデゴーア→ウィリアンと繋ぎ、最後はゴール前に詰めたペペ自身がボールを押し込んで3点目。レスターを一気に突き放した。試合はこのままアーセナルが3-1で逆転勝ちを収めている。

 このように今回のレスター戦の勝利は、未熟な若者が配置された敵の弱点を執拗に突いた、アルテタ監督の“えげつなさ”がもたらしたものだった。

(文:本田千尋)

【了】

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