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Monday, May 31, 2021

可変式望遠レンズの実力は? 「Xperia 1 III」のカメラであれこれ遊んでみた:荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ(1/3 ページ) - - ITmedia

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Xperia 1 III 細長いスタイルが定着した「Xperia 1」シリーズ。IIIでは望遠カメラ周りに注目

 スマホカメラは進化する過程で「デジタルカメラ」とは別方向に大きくかじを切って成功したけど、そんな中、あえてデジタルカメラとして扱える、本格的な撮影に対応できるものを作ろうというソニーらしいコンセプトで登場したのがXperia 1シリーズなのである。当初はその志に追い付けない感があったけど、目指すところがあるというのは大事で、年々着実に進化しているのだ。

 今回の大きな進化は「トリプルカメラだけど実質クアッド」ってとこと、2つに分かれていたカメラアプリが統合されたこと。この2点を中心に見ていきたい。

 なお、レビューでは発売前の試作機を使用している。

実質クアッドカメラのXperia 1 III

 Xperia 1 IIIは見ての通り、3つのカメラを搭載している。上から順に超広角カメラ(16mm相当)、広角カメラ(24mm相当)、望遠カメラ(70mm/105mm相当)である。

Xperia 1 III トリプルだけど実質クアッド

 この望遠カメラが新しい。これは内部に光学ズーム機構を持っており、70mm相当と105mm相当を切り替えて使うのだ。ソニーでは可変式望遠レンズと言っている。これ、ちょっと分かりづらいのだけど、70mmと105mm相当の2段階のステップズームと思っていい。使う側としては実質クアッドカメラなのだ。

 では超広角から105mm相当の望遠まで順番にそのズームっぷりを見てみたい。超広角は16mm相当でF2.2。イメージセンサーは1/2.6型で1200万画素だ。これは従来と同じ。

Xperia 1 III 16mm相当の超広角カメラ

 続いて、広角カメラ。メインカメラとなるのでちょいと高性能で、レンズは24mm相当でF1.7と明るく、イメージセンサーサイズも1/1.7型とちょっと大きめで1200万画素。いまひとつカラっと晴れてくれなかったのでコントラストは低めだけど、写りはナチュラルでいい感じ。

Xperia 1 III メインカメラとなる広角カメラで撮影。最も階調が豊かで高性能なカメラがこれ

 3番目は望遠カメラの70mm相当の方。広角カメラからは2.9倍となる。イメージセンサーは1/2.9型。超広角カメラのセンサーより少し小さいが、前モデルの望遠カメラよりは少し大きくなり、画質も上がった。F値はF2.3に抑えられている。

Xperia 1 III 70mm相当の望遠カメラで撮影。快晴ならもうちょっとキリッと写ったはず

 最後は105mm相当。70mmの1.5倍であるが、最後のひと伸びって感じでうれしい。F値はF2.8と70mm相当に比べるとちょっと暗くなるけど、スペック的には悪くない。

Xperia 1 III 105mm相当の望遠カメラで撮影。ここまで撮れれば十分

 こうなると24mmと70mmの間がちょっと離れているよね、50mm相当くらいが欲しいよね、となる。ソニー的にはそこは「AI超解像ズーム」(AIを利用して補完する)を使い、クオリティーを上げたという。そこで48mm相当(広角カメラの2.0x)で撮ってみた。

Xperia 1 III デジタルズーム(AI超解像ズーム)で48mm相当にしてみた
Xperia 1 III ディテールは甘くなるけど、不自然さはあまりなくて十分使える。これはよい

 何だかんだいってディテールは少し甘くなるけど、「AI超解像」というだけあってデジタルならではの不自然な感じは軽減されている。良いことである。今後、この手のデジタルズームの技術ってすごく重要になっていくと思う。

望遠カメラを使いこなそう

 気になる望遠カメラは当然、光学式手ブレ補正付きで、Dual PD(つまり像面位相差AF)でAFも速くなった。これは期待できそう。まずは走ってくる電車を連写だ。

 連写はAF/AE追従で秒20コマと超高速。ただしこれは広角カメラのみ。望遠カメラでは秒10コマとなる。ちょっと残念。で、105mm相当で連写したのがこちら。

Xperia 1 III 走ってくる特急列車をリアルタイムトラッキングAFで追い続けて連写

 AF-Cモードで被写体をタップしてリアルタイムトラッキングをかけてやると、きっちり追い続けてくれる。

Xperia 1 III 105mm相当の望遠で連写した中の1枚。少しディテールは甘いがキッチリ撮れている

 さらに被写体ブレを防ぐためにシャッタースピード優先にして1/1000秒で撮影。

Xperia 1 III かけぬけていく電車をきっちり捉えるため、シャッタースピードを上げて撮影

 手前にかぶったワイヤにAFが引っ張られることなく、ちゃんと車体を追い続けてくれた。

Xperia 1 III 手前のワイヤにとらわれることなく、ちゃんと電車のフロントを追い続けてくれた。これはよい

 ただ、ローリングシャッターのゆがみには注意。望遠カメラのセンサーはけっこう出ちゃうのだ(逆に広角カメラでは高速で動く被写体を撮ってもほとんどゆがまない)。さらに、70mm相当の望遠で撮った鶏もどうぞ。

Xperia 1 III 鶏の顔を認識(鳥認識AFは持ってないので、動物と判断したのかも)したの図。おかげでフェンスではなく顔にフォーカスが合っている
Xperia 1 III 70mm相当で鶏の顔を。けっこう近くの被写体でも撮れるので、望遠カメラの使い道は広い。写りもすばらしい

 望遠カメラはけっこう寄れるので花も撮れる。

Xperia 1 III 105mm相当の望遠であじさい。望遠カメラはモノの形がきれいに出るので、こういうときによいのだ

 70mm相当はポートレート撮影にもちょうどよい焦点距離だ。

Xperia 1 III 70mm相当の望遠カメラで撮影。天候はよくなかったけど、色もディテールも悪くない

 センサーが小さい分、高感度時の画質はちょっと不満ではあるが、前モデルの望遠カメラより良くなっており、撮影の幅が広がったって感じ。

2つのカメラアプリが融合して使いやすくなった

 もう1つのトピックはカメラアプリ。Xperia 1 IIは通常のカメラアプリと、アップデートで後から追加されたPhotography Proという2つのアプリがあり、使い分ける必要があった。カメラアプリは他のXperiaと同じ「スマホカメラ」っぽいアプリ。Photography Proは露出を自分でコントロールできる「本職カメラ」っぽいアプリだ。

 ただ、カメラアプリは「動物瞳認識AFが使えない」「超高速連写が使えない」、逆にPhotography Proはスマホカメラならではの「インカメラ・ぼけ・動画」を使えないという欠点があり、使い分けが面倒だった。

 Xperia 1 IIIでは両者が融合。カメラアプリは「Photography Pro」1つになり、そのBASICモードが従来の「カメラアプリ」となった。こんな感じで切り替えて使う。

Xperia 1 III BASICモード。画面はスマホカメラアプリらしく丸いシャッターボタンもある
Xperia 1 III 画面上のダイヤルを回す感じで撮影モードを変える。AUTO以下はPhotography Proのユーザーインタフェースに切り替わる
Xperia 1 III プログラムオート(P)にすると画面デザインがガラリと変わる。常に露出が表示され、右側はシャッターがなく現在の撮影設定が表示されタッチでさっと変えられる

 操作系は変わるが、写りの差はそれほどない。

Xperia 1 III BASICモードで撮影。シーンを認識して自動的に「ソフトスナップ」になり、明暗差が大きいのでHDRがオートでかかった
Xperia 1 III プログラムオートで撮影。階調の調整はDROにしたので背景が少しトんでいるが、その分ナチュラルな写り

 PSMの各モードでは露出補正やホワイトバランスやISO感度のマニュアル設定など細かいコントロールができる。まずはこれらのモードでいろいろ撮ってみたい。一番の特徴は、画面の右側がさまざまな撮影設定で埋まっていてシャッターボタンがないこと。

Xperia 1 III シャッターボタンがないので、このモードの時は側面(というか上面)のシャッターキーを押す。半押しも可能だ
Xperia 1 III 横位置で構えると上面にくるシャッターキー。これで撮影。またこれを長押しするとカメラが立ち上がるので便利

 このモードのときは側面のシャッターを押すのだ。だから両手で構えないと安定しないし、縦位置で撮るときはちょっと不便。その代わり、細かいセッティングをさっと変えられるし、常に現在の設定が見えているので、カメラを知っている人には扱いやすい。

 個人的にはAF-ONボタンがいい。AF-Cモードにしてこれをタップすると、リアルタイムトラッキングAFが働きフォーカスを合わせ続けてくれるのだ。ソニーのミラーレス一眼「αシリーズ」にも「AF-ON」ボタンはついており、私もαを使うときは愛用している。これは犬の瞳にフォーカスを合わせ続けている図。

Xperia 1 III AF-CモードでAF-ONをタップすると、被写体を追い続けてくれるので、動物を撮るときにいい
Xperia 1 III 事情があって保護された子犬。現在里親募集中だそうです。ちょっとディテールが甘いのは、室内のためISO感度が上がったから

 Photography Proのモードではカメラを知っている人ほど使いやすいのが特徴。例えばレンズの切り替えだ。4つの焦点距離が35mm判換算時の数値で表示され、さらにその中間に合わせたいときも、フルサイズセンサーのカメラを使っている人に分かりやすいよう、35mm判換算の焦点距離で表示してくれるのだ。

Xperia 1 III 24mmの広角カメラを50mm相当のデジタルズームにセットした図
Xperia 1 III AI超解像ズームのおかげで多少ならデジタルズームをかけても十分なクオリティーで撮れる。逆光気味だったので+1/3の露出補正をかけた

 ISO感度やホワイトバランス、シャッタースピードをマニュアル設定できるのもいいところ。夕日がキレイだったので印象的に撮ろうと、ホワイトバランスを太陽光にし、マイナスの露出補正をかけて撮ってみた。

Xperia 1 III 夕焼けがきれいだったので−1の補正をかけ、ホワイトバランスを太陽光にして撮ってみた
Xperia 1 III 夕焼けは少しマイナスの補正をかけてやると赤がきれいに出る

 反対にBASICモードは普通にスマホカメラなので、細かいことは考えずに気楽に撮るのにいいし、スマホならではのぼけモードも使える。特に望遠でぼかすといい感じのポートレートになるのでおすすめ。傘を差しているという難しい条件だったけど、iToFが頑張ったのだろう。傘の一部がうまくに認識されないくらいで済んだ。

Xperia 1 III 傘があるので不安ではあったけど、ぼけモードを駆使して雨のポートレートを。傘の一部以外は完璧

 インカメラを使った自撮りもBASICモードオンリーだ。

Xperia 1 III インカメラを使えるのはBASICモードのみ

 ポートレートセルフィー機能で背景をぼかす&ビューティー機能で撮ってみた。

Xperia 1 III ポートレートセルフィーで背景ぼかし&ビューティーな自撮りを。インカメラ側にはiToFがないのでエッジがちょっと微妙だった

 動画もBASICモードで撮る。

Xperia 1 III 動画は4Kまでだが実にナチュラルで良い。BASICモードで撮るべし
手ブレ補正もよく効くし、写りも自然(もやっとしているのは雨が降っていたからです)

 本格的に映像作品を撮りたいときは、「Cinema Pro」を別途起動することになる。

本職デジタルカメラらしい自然な写りに注目

 では最後にそれ以外の作例を。まずは料理。これはBASICモードで撮影。料理と認識された。

Xperia 1 III ラーメンをBASICモードで。料理と認識された。気軽に撮るときはシーン認識があるBASICモードがいい

 続いて夜。イマドキ流行のナイトモードは持ってない。おかげで黒がぎゅっと締まった夜景らしい夜景を撮ってくれる。

Xperia 1 III 夜の団地。イマドキのスマホみたいに暗部を明るくしたりはしない。本職カメラで撮るとこんな感じなのだ

 さらに70mm相当で夜の公衆電話を。この望遠カメラはけっこう寄れるのでつい使ってしまう。

Xperia 1 III 70mm相当で夜の公衆電話。背景に団地のエントランスを入れてみた。くらい分ちょっとざらっとしたけど悪くない

 105mmでの望遠でも1枚。夕刻、駅を出たら巨大な虹がかかっていたので、望遠カメラにして撮ってみた。

Xperia 1 III 大きな虹が出ていたのでつい撮ってしまった。105mm相当の望遠ならここまでしっかり撮れる

 最後は広角カメラであじさい。雨の中、実にいい感じにしっとりと撮れた。

Xperia 1 III ぐぐっと寄って雨のあじさい。画質的には広角カメラがやはり一番いい。ディテールもきれいに出る

 と、Xperia 1 IIIの特徴的なところを中心に見てきたが、写りが非常にナチュラルで好感が持てるというのが一番の感想だ。イマドキのスマホカメラは強めにHDRをかけてくっきり鮮やかに仕上げる傾向があるし、その方がぱっと見てきれいに感じるのでそれが喜ばれるわけだが、Xperia 1 IIIはあえてそういう画作りは避け、作りすぎない比較的ナチュラルな写真を撮ってくれる。デジタル一眼などを使い慣れている人にはこちらの方がしっくりくるし、不自然な写真になることも少ない。

 でも、αを目指すのならまだまだレベルアップできるところはあるわけで、個人的には多少カメラ部が分厚くなってもいいから、クオリティーを追求していってほしいなあと思ったりもするわけで、この先も楽しみである。

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