先日、タイで開催されたイノベーション関連の国際カンファレンスに参加した際「マインドセット」という言葉を多くの発表者が強調していたのが印象的だった。マインドセットは文字通り、考え方や信念の持ち方を意味する。心理学から始まった概念で、教育や経営をはじめとする他の学術領域でも使われている。
新聞記者を経て、2001年農工大ティー・エル・オー株式会社設立とともに社長に就任(現任)。2013年から東京農工大学大学院工学府産業技術専攻教授。大学技術移転協議会理事。
マインドセットの前に「世界的な」や「起業家的な」といった形容詞を付けた研究も多い。もちろんマインドセットは変えることができる。先のカンファレンスはイノベーションを先導する専門職が情熱やアイデア、手法等を共有する場を標榜している。発表者は聞き手を鼓舞する狙いもあって多用したのだろう。
マインドセット研究で特に興味深いのは、個人の能力は努力により向上可能とみる成長マインドセットと、能力は変化しないという固定マインドセットに分けて影響を分析する潮流である。成長マインドセットを持つ人は学習や努力に積極的で、むしろ難しい課題への挑戦を好む。結果として自分の能力を伸ばす。
固定マインドセットの人は、その逆になる。また成長マインドセットを持つ人は成績のような結果よりも、結果に至るプロセスを重視する傾向がある。
さらにマインドセットについては、グリットと呼ばれる後天的に獲得可能な「やり抜く力」との関連でも実証研究が進んでいる。単にアイデアを生み出しただけではイノベーションに結び付かない。大企業、ベンチャーにかかわらず、いくつもの障害を乗り越える必要がある。従業員のマインドセットが企業活動に大きな影響を及ぼす可能性は、マネジメントの経験者には想像できるだろう。
実際に米マイクロソフトはサティア・ナデラ氏が最高経営責任者(CEO)に就任して以降、成長マインドセットを企業文化の重要な柱として従業員に広めている。同社はウィンドウズでパソコンの基本ソフト(OS)を席巻した頃と異なり、近年はGAFAに成長面で押されていた。成長マインドセットの活用は従業員が成熟した企業との意識に陥る懸念を払拭し、もう一段の成長を実現したいという強いリーダーシップの表れであろう。
人間の能力は先天的と後天的の両方の要素によって伸長する。実証研究からは、後天的に獲得できる要素は一般に想定している以上に個人の能力に大きな影響を与える可能性があることが分かる。米国のMBAでは現職の企業経営層を対象にした短期プログラムが珍しくないが、単なる箔付けではなく、自分の能力がまだ伸びると考えて参加しているのではないか。身の丈に自分で制約をかけてしまっては伸びるものも伸びない。成長マインドセットの効果は、人生100年時代に長期にわたって活躍したいと考える人にとっても心強い研究成果である。
[日経産業新聞2020年4月1日付]
"道" - Google ニュース
April 03, 2020 at 02:30AM
https://ift.tt/39xrwNa
成長への信念が道開く - 日本経済新聞
"道" - Google ニュース
https://ift.tt/37fc0UX
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment