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Thursday, April 2, 2020

鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道 - CINRA.NET(シンラドットネット)

2020年、7度目の開催を迎えるはずの『VIVA LA ROCK 2020』。ここで「はずの」と書いたのはなぜか? 言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大によって音楽イベント、ライブがことごとく中止に追い込まれ、自粛要請だけが繰り返されて一向に補償がなされない状況も含め、エンターテイメントそのものが脅かされている最中だからだ。特に、音楽イベントやライブハウス、クラブといった場所が感染場所のメインとして一方的に挙げられ続けている今は、音楽文化そのものが殺されかねない状況だとすら思う。

しかし、自粛に伴う補償を求める署名が大きなムーブメントを生んだり、当分の間ライブで収益を上げられない音楽家のためにトラックを無償で提供するプロダクションの活動があったりと、新たな苦しみに立ち向かうための新たなユニティによって、音楽はまだまだ未来を見据えながら今も歯を食いしばっている。

そんな中、大規模な春フェスも今まさに開催有無の瀬戸際に立たされている。昨年までで言えば、『VIVA LA ROCK』を通じて、カルチャーとして定着したフェスのいい部分と悪しき部分、フェス自体が先天的に持っている批評性とメディア性、そして何より日本の音楽の動向をフェスを通じて語り合ってきた鹿野淳とのインタビューだが、今年の取材は今まで以上にシビアにならざるを得ない。

ここから音楽とエンタテインメントはどんな変化をして、どう生存していけるのか? アーティスト、観客とフェイストゥフェイスで物語を作ってきた鹿野と『ビバラ』だからこそイメージできる未来の話。そして現在の、胸が痛くなるほどのドキュメントを訊いた。

小規模のライブハウスでコロナウイルスの感染が確認されたときから、エンターテイメント業界が復興していくプロセスをフェスの中でストーリー化して、世の中に訴えなきゃいけないという気持ちが生まれた。

―まず、今日このインタビューが3月20日の20時に行われていることを明言してから始めたいんですけど。

鹿野:そうだね。昨日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会見があって、「今、大規模イベントを開催してメガクラスターが発生すると、一瞬にして今までの努力が水泡に帰す」という発言がありました。実は、その会見の前にとあるテレビ局の報道番組から「専門家会議の会見を受けて、ウチの番組で『VIVA LA ROCK』(以下、『ビバラ』)を開催するかしないかを決めてコメントしてもらえますか?」という連絡がきて。

―本気で言ってるのかな? クソですね。

鹿野:それは本当にびっくりした。で、5分かけてお説教させてもらいました(笑)。「今から行われる専門家会議の会見で何が語られるのか、あなたは裏を取れてるんですか? 完全に裏を取れてるのであれば、今教えてください。それであれば番組の生放送前にいろんなことを時間をかけて考えます」って言ったら「いや、そこまでは……」って言うわけ。さらに「そもそも、本気で僕がひとりで『ビバラ』の開催有無を決められると思ってるんですか? 僕がひとりで会見後1時間もしないうちにそれを決められるほど、チンケなフェスをやっていないんですよ」と。

プラス、その専門家会議の会見で大規模イベント開催に対して白か黒かを明言してくれるならいいけど、自粛要請以上でも以下でもないんだろうし、期限的にもGWまで言及しないだろうし、僕らは参加者の危険を犯してまでフェスをやりたいのではないし、参加者の危険を犯すこと自体が、そのまま参加者から不参加者への危険に繋がることも知っている。だけど同時に簡単にモラルだけに安易に従いたくないし、今、音楽とかライヴとかエンターテイメントが世の中の矢面に立たされていて、そのことに対して何を考え何を示すべきか、そこまで考えてこっちはやっているのに、なんでテレビ局やテレビ番組のためにフェスをやるかやらないかの判断をここで下さなきゃいけないんだって話で。

2019年の模様。昨年は4日間開催に拡大され、さいたまスーパーアリーナのスタジアムモードを用いて82,000人(屋外フリーエリアのVIVA LA GARDENを含むと163,600人)を動員した。

―しかし『ビバラ」くらい大きな規模のフェスの主催者にそんな連絡がくるとは、世間で音楽イベントがいかに軽んじられてるかが皮肉にもよく伝わってくるエピソードですね。今日は本来、昨年の取材(鹿野淳が語る、ロックフェスの信念と『VIVA LA ROCK』の真実)を踏まえて鹿野さんのフェス論がいかに更新されてるのかを切り口にしたかったんですね。なぜか昨年のインタビューは多くの人が読んでくれたみたいだし(笑)、今回も疑問に思ったことをストレートに訊くような内容にしたかったけど、もはやこの状況にあっては──。

鹿野:イジりにくいでしょ? どれだけ元気に対応しても、もう存在自体が痛々しいんでしょ?

―というか、応援するしかないじゃん。

鹿野:あはははははは! そうだよね。ありがとうございます。

―ラインナップにおけるジャンルの偏りがどうとか、他のフェスとの差別化がどうという話をしたところで、「今年は開催できないかもしれない」というリアルな難題と向き合ってるフェスの主催者に対して、どんな提言をしても意味がないなと。シンプルに開催して成功してほしいとしか思わない。

鹿野:うん、そうだろうね。それが本音だよね。とにかくライブやイベントやフェスが今一度再開できる環境が欲しいよね。それはつまり、世の中からウイルスというテロが取り払われた、もしくは取り払われそうだということと直結するわけだから。

『ビバラ』最大級を誇るSTAR STAGE 撮影:釘野孝宏 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
『ビバラ』最大級を誇るSTAR STAGE 撮影:釘野孝宏 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
『VIVA LA ROCK 2019』STAR STAGEのグランドフィナーレ 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
『VIVA LA ROCK 2019』STAR STAGEのグランドフィナーレ 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

―それを踏まえて、年明けから徐々に中国の武漢で新型コロナウイルス感染症が拡大していって、1月24日から30日までの春節(中国における旧正月)を最初のピークとして、「水際で感染拡大を阻止しなければならない」という認識が各国に広がりました。それでも僕を含めて日本の多くの人はまだ楽観的だったと思うし、結果的に各国が水際で阻止できなかったから今の混沌とした世界の状況があるわけですけど。あの時点で鹿野さんは『ビバラ』の主催者としてどれくらいの危機意識を持ってましたか?

鹿野:やはり身の丈に合わないほどデカいフェスをリスクを被って主催していると、あらゆることに対して楽観的ではなかったよ、いちいちビビリまくって生きているからね。まずは1月中旬から末にかけて、コロナウイルスの影響でフェスが開催できなくなった場合に興行中止保険が下りるか調べておこう、結構まずいかもしれないからという打ち合わせをして。これは僕らだけじゃないと思うけど、みんなうっすらしか知らなかったんですよ、ウイルスで保険が降りるか降りないかってことを。

だからウイルスが「免責」に含まれるかどうかを確認したところ、「あー……やっぱり下りないですね」ってなりました。ちなみにテロ、戦争、原発事故関係も補償の対象に含まれないんです。その時点でまず、これはヤバいとなった。で、2月26日に安倍首相が専門家会議を受けて、イベントの自粛を要請する会見を開いたよね。あの時点から本格的にエンタメの危機が始まった。その時点ではまだ「クラスター」という言葉は広がってなかったけど、「このままライブ会場での感染が認められていくようであればマズいな」と思っていたところで、残念ながらそれが大阪で複数、現実になってしまった。

そのときにフェスの主催ではなく音楽ジャーナリスト的な視点で率直に思ったのは、このままでは音楽やライブが目の敵にされてしまうし、それは本当に深刻なことだなと。ライブやライブ会場自体がいけないわけじゃないのに、現実的にそこがウイルスの巣窟だと総称され、エンターテイメント自体に加害者意識を押し付けられる事態が起こるんじゃないかということで。

―本当に。もともと真っ先に槍玉に挙げられやすいジャンルではあるけど。

鹿野:そうだね(笑)。だから最初にライヴが槍玉に挙げられた時はむしろこちらが被害者だとさえ思った。ただ、小規模のライブハウスで感染が確認され、残念ながら広がりを見せたときには、さすがに被害者であるという気持ちは消えましたよね。とにかく今大事なことは、ライブの復権でなければ音楽の復興でもなく、そういったことが再開できるような環境を率先して作ることだなって。だからこそ予防や事態の収束を呼びかけて、しかもこちら側ではエンターテイメント業界が復興していけるプロセスを踏んで、それをストーリー化して世の中に訴えなきゃいけないという気持ちが生まれました。だからまず、新型コロナに勝とう、新型コロナに勝つためのルールを守ることを徹底しようとなった。そのうえで3月4日に音制連、音事協、ACPCの音楽系3団体をはじめとするエンターテイメント関連各社が新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた共同声明を発表して、「#春は必ず来る」という合言葉を発信しましたよね。幸い、あのメッセージと思いは一般層に広まった。

鹿野淳

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