2018年にシンシナティ・レッズの一員としてメジャー・デビューを果たしたディクソンは、その年のオフシーズンにタイガースへ移籍。
2019年は117試合に出場して、チーム最多の15本塁打、チーム2位の52打点を記録した「タイガースのホームラン王」。28歳と選手としても脂が乗り始める年齢で大きな期待がかかるが、そんな若き長距離砲をタイガースが手放したのにはやはり理由がある。
身長188センチ、体重97キロのディクソンは一塁手が本職だが、メジャーでは外野の3ポジションと二塁も守ったことがある器用な選手。それだけではなく、投手としても4試合に登板したことがある便利屋だ。
アリゾナ大学2年生のときにカレッジ・ワールドシリーズ制覇に貢献。3年生で打率.369、30盗塁を記録して、強豪チームの多いパック12・カンファレンスの首位打者と盗塁王に輝いた。その年のドラフトでロサンゼルス・ドジャースから3巡目指名を受けて入団した。
プロ3年目の2015年には1Aと2Aで合わせて128試合に出場して、19本塁打、26盗塁を記録。パワーとスピードを兼ね備えた選手だったが、その年のオフに三角トレードでレッズに移籍。レッズはオールスター選手で、ホームラン・ダービーのチャンピオンでもあったトッド・フレイジャーを手放しているので、この時点ではまだ将来を期待されたプロスペクトだった。
2006年は2Aで16本塁打、15盗塁、2017年は3Aで16本塁打、18盗塁と順調に成長を続けて、2018年5月には待望のメジャーへ初昇格。74試合で打率.178、出塁率.218、OPS.574とメジャーの壁にぶつかった。レッズはそのオフにメジャーリーグ登録枠の40人からディクソンを外すためにウェイバーにかけたところタイガースが獲得した。
前述の通り2019年はチーム最多のホームランを放ちながらも、そのオフには40人枠から外され、どのチームも獲得には動かなかった。今季もシーズン終わりに近付いた9月22日までメジャーに呼ばれず、5試合の出場に終わった。
メジャーでは通算197試合に出場して、打率.228、出塁率.271と確実性に欠けるのが、タイガースが手放した最大の理由。183三振、28四球と球をよく見ないで、とにかくバットを振り回した。チームのホームラン王だった2019年でもrWARは-0.4と代替選手以下との評価。メジャー3年間全てでrWARはマイナスで、通算では-1.1なのだからタイガースが見限ったのも理解できる。
メジャーでは結果を出せなかったディクソンだが、その1つ下のレベルの3Aでは3シーズン合計で184試合に出場して、打率.280、23本塁打、90打点、OPS.806と合格点の成績は残している。マイナーでは活躍できるが、メジャーでは通用しない中途半端な選手と評価されてしまった。
ディクソンの中途半端加減は、「器用貧乏」と言い換えることもでき、多くの守備位置を守れるが、決して守備はうまくなく、肩も弱い。一塁手としてはメジャー最速のスピードを誇るが、それは一塁手に限ったものであり、全体的に見ればやや速い選手でしかない。
多くの守備位置を守れる万能選手は、近年のメジャーでは重宝される傾向が高いのに、2シーズン続けてどこのチームも獲得に動かなかった。
そんなディクソンの最大の長所は28歳という若さ。
これまでにもマイナーで活躍しながらも、メジャーでは通用せずに、日本球界にやってきた外国人選手は多い。日本で打撃を学び直して、メジャーに戻っていた選手も少なくはない。そんな選手たちの存在がディクソンの励みになっているはずだ。
日本で三振を減らして、出塁率を上げられれば、器用なディクソンをベンチに置きたいメジャーチームは多い。
昨年12月に結婚したばかりのディクソンは、新婦のためにも野球人生をここで終わらせたくない。日本に行って、新たな打撃技術を学ぶ覚悟はできている。貪欲に学ぶ姿勢で臨めば、大きく開花できる才能は備えている。
今年の夏はマイナーリーグの試合もなく、マイナーの球場で練習を続ける日々が続いたが、その経験はディクソンを精神的に一回り成長させた。なんでもかんでも振る悪癖を修正して、ボールを見極めることを心がけた。
日本で化ける可能性を秘めた大砲。それがブランドン・ディクソンだ。
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