勝つために、削る。楽天田中将大投手(32)が27日、ヤクルトとの練習試合(浦添)で先発し今季の2度目の実戦マウンドに上がった。直球とスプリットに重点を置き、予定の3回を42球2安打2四球1失点。初対戦のヤクルト村上に適時打を許すも、2打席目は縦の宝刀で打ち取り、貫禄を見せた。開幕2戦目、3月27日日本ハム戦(楽天生命パーク)での先発も内定。信念をぶらさず万全を期す。

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鋭く小さく、落ちた。3回2死、カウント1-1。田中将が自信を持って腕を振る。前打席で直球を捉えたヤクルト村上のバット、数センチ下にスプリットを潜らせた。注文通り、力感に欠ける二ゴロに打ち取った。「1戦目で投げた時よりもはるかに、少しずつ呼び起こしていかないといけない部分が出てきた。すごく意味のある登板だった」。納得の42球を積み上げた。

狙いをギュッと絞った。2度目の実戦登板は、直球とスプリットに重点を置き、特にカウント球、勝負球とフル活用する代名詞の微調整にこだわった。「スプリットはここ数年、納得するようなボールが多くなかった。しっかりと操りたい」。9球をスプリットに回し、球場表示では133~142キロと幅が出た。「球種を絞ることで、工夫してやらざるを得ない状況を作ろうと思った」と用途に応じて使い分けた。ストライクゾーンへ投じた3球中2球、ボールゾーン6球中2球で空振りを奪い「他の球種は少なくなりましたけど、スプリットは前回より良かったです」。

仕上げ方は、以前から変わらない。「自信のないボールは投げません」。11年の春季キャンプ。ブルペンで1度もフォークボールを投げなかった。「投げ損じは打たれる比率が高い」と分析して潔く捨て、140キロ台のスプリットを手中にした。13年のWBC前にも「ボールに合わせた投げ方、意識にしないといけない」とキャンプ序盤を最後にカーブをやめた。高度で多彩な武器におぼれることなく、状況下でベストを尽くすために改良を重ねる。

収穫と同価値の課題をあぶり出していく。前回同様マウンドの土を気にするそぶりはあったが、2回以降は落としどころを見つけ、力感が増した。「7年間向こうで積み重ねてきて、染みついているものもある。こっちでそれが生きるか、といえば邪魔になるものもある。そこはそぎ落として新たに思い出してやらないと。その作業はまだまだ必要」。積み上げて削り、削っては積み上げる。3月27日、本拠地での日本ハム戦まで、職人さながらの地道な過程を踏む。【桑原幹久】

◆オリックス渡辺スコアラー 最初はスプリットを見逃されているところもあったが、2回途中くらいから振りにいくところまで、コースを上げてきていた。それでも甘く入らないところが、さすが。(直球とスプリットの)2球種だけでも抑えていけますよ。