新型コロナウイルスの感染拡大の影響でさまざまなイベントが中止、変更を余儀なくされた2020年。プロ野球の毎年恒例のビッグイベントで今月26日に行われるドラフト会議も感染防止の観点で多くの制限が設けられる。運命の会議まで、あと6日。変更点と、その裏側を探った。
運命の一日も様変わりする。未知の感染症が広がり、ソーシャルディスタンスなど新たな生活様式が取り入れられている日常。今年のドラフト会議は感染対策を踏まえて、ハード面では別物になった。改めて整理し、背景と影響を考察した。
(1)メイン会場なし 目に見える最も大きな変更点は会場だ。例年2000平方メートルを超える都内ホテルのホールが会場だった。各球団の円卓が並び、抽選を行うステージ、指名選手が表示されるビジョンつきの大パネルが設置されていた。ある在京球団のスカウトは「会場に並んで入場するところからとか、やっぱり我々も緊張する。ドラフトのドラマ性はあの会場の雰囲気が高めている」と言った。だがそのメイン会場が今年はない。代わりに用意されるのは12球団それぞれの個室と、競合となった際のために用意された抽選ルーム。各球団は個室で指名選手をオンラインで送信し、競合した場合は抽選を行う代表者が抽選ルームへ移動し、クジを引くことになる。報道陣も当日、会場での取材は不可となった。
(2)個室の感染対策 日本野球機構(NPB)は事前に保健所と話し合いを重ね、十分な感染対策を決定した。個室には各球団の入室者を6人に限定。マスクの着用が必須となる。さらに個室内のテーブルには6人を仕切るアクリルボードを設置。窓開けによる換気も促すなど、最善の注意を払う。会議に出席予定の関西球団の編成担当者は「個室で指名を行っていくということに関しては我々にとってはメリットがある」と歓迎する。例年の12球団が一堂に会する大部屋では他球団との距離も近く、会話や打ち合わせは必要最低限で小声だった。「今年は会議中の議論が活発にできる。指名していく上では意思確認もはっきりできるし、いい面の方が多い」とは前出の編成担当者。マスク着用でアクリル板も設置されているが、活発なコミュニケーションは可能だ。
(3)12年ぶり無観客 09年から招待された1000人のファンがドラフト会場に入場した。抽選の際に当たりクジを引き当てた代表者のガッツポーズやインタビューへの声援など会議を盛り上げる要因の一つだった。参加者の人数抑制はファンだけではなく、運営側も同じ。中継を行うTBSも当日のスタッフは最小限とし、一部はフェースシールドを着用したまま中継に携わるという。NPBはファンについては約1000人のオンラインイベントへの招待を決定。1位指名終了後の監督取材などもオンラインで行われる方向だ。
各球団の指名選手はもちろん、会議自体のあり方自体も注目される今ドラフト。考えられる部分で、ある意味ではスリム化が図られる。在京セ・リーグ球団の編成幹部はこう表現した。「イベント色が強かったドラフトが、単純に会議になる」。来季以降にも大きな影響を与えそうな「新様式」のドラフト会議に注目だ。
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